周りの方の相談にお答えすることの治療上の意味について

周りの方の相談にお答えすることの治療上の意味について

【①はじめに】

患者さんは、英語で patient といいますが、
この単語は、形容詞で、“我慢強い”という意味を持っています。

病気になったことがあれば、容易に実感できるのではないでしょうか。

この度、患者さん・そのご家族・ご友人その他に対する相談業務を開始するにあたり、これまでの臨床経験における相談内容を思い出してみました。

その結果、今さらながらですが、
患者さんのご家族・ご友人の精神的、肉体的な苦痛は
想像以上に大きい事が多いことに気づきました。

特に、精神疾患の場合、お互いの感情が引き出されることが多く、
かなりのダメージを受けることが少なくありません。

ひどい場合、患者さんの世話をされている周りの人が
精神的に病気になってしまうこともあるくらいです。

患者さんは当然、“我慢強い”ですが、患者さんのご家族・ご友人も
それと同等か、それ以上に“我慢強い”と思いました。
(そうでないと、とてもやっていけない)

一方で、ご家族との連携が上手くできて、ご家族にも必要な情報を出しながら、
精神的にもバランスをとることができている場合
ご家族が健康を維持できるのはもちろんですが、
患者さんのその後の経過も一般に良いものとなっていたことも
思い出しました。

それにより、ご家族が元気になり…、さらに患者さんが良くなり…。

と相乗効果的にご家族みんなが元気になっていく感じです。

こうした状況をこれまで、数多く見てきました。

私は、研修医の頃から、
患者さんの環境が症状に与える影響の大きさを経験的に知っていましたので、
その為に必要な事(一番多いのは、ご家族からの相談や質問に応じること)
については、無条件、第一優先でおこなっていました。
(内容は、ごく一般的なことですが、必要な時はその都度、時間を
とっていました。)
(その分、その効果を実際に実感する機会も多く持てたと思います)

その中で、特に、他院からの紹介患者さんの診察で思っていたのですが、
意外と、ご家族への情報提供、ご家族と主治医との連携が少ないと
思われるケースが少なからずみられました。

また、最近、ある事例検討会での報告を聞く機会がありましたが、
やはり同様の印象を持ちました。

現在の精神科医療では、診察時間、人的パワーが限られていることや、
ご家族の遠慮など、いくつかの原因があるのかもしれません。

つまり、ここを解決すべく、ご家族・ご友人その他への相談業務を行うことで、
状況を改善する可能性を強く感じています。

 

【②精神科の治療と相談業務の関係について】

一般的に、病気の治療は患者さんが中心となり、主治医とともに
進めていくものであることは間違いありません。

特に、心を扱う精神科においては、患者さんの主体性が大切であると
考えられることが多いように思われます。

確かにそうです。

しかし、実際には、身近なご家族のかかわり方を改善することで、
患者さんのストレスが減り、症状に影響を与え、
それにより、患者さんの治療への取り組みが、より良いものとなり、…。
という経過をたどるケースも数多くみてきました。

しかも、そのことは、周りのご家族にとっても、何倍もの影響となって
返ってくるものです。

これらは、患者さんの周りの人への相談業務で対応できると思います。

私は、日頃から、

患者さんの精神症状=本来の精神疾患+抱えているストレスの影響

と考えています。

しかも、後半のストレスの影響は、必ずしも小さくはないと考えています。
(かなり激しい精神症状の方が、ストレスを解決した途端、症状が消え
、その原因のほとんどがストレスであったことが判明した症例を
数多くみてきましたので。)

これは、抱えているストレスを減らすだけで、確実にその分の症状が
軽減するということだと考えられます。

この点からも、相談業務で、ストレスをコントロールすることの意義は
大きいと考えています。

そこで、始めは、周りの人のストレスを、

その結果として患者さんのストレスを
コントロールできたらと考えています。

 

【③現状】
医師の忙しい勤務状況の為、医師は、患者さんの診察で手いっぱいの状況
です。
それを実感している患者さんやそのご家族の方は、どうしても相談を
医師にすることは遠慮してしまいがちです。

医師に直接相談できたとしても十分に時間をかけて行うことはかなり難しく、
内容にもよりますが、医師との相談はポイントだけを短時間で行い、
その他は看護師や相談室の担当者と行うことが多いのではないでしょうか。

 

【④私が考える相談業務の目標】

一言で言うと、

“患者さんのご家族に、安心と自信を与えること。
そして、この状態で、患者さんの援助に当たって頂くことで、
患者さんの症状へ良い影響を与えること”

ことです。

 

【⑤精神科医である私が相談業務を行うことのメリット】

1.内容
これまでの臨床経験(相談業務も含む)をもとに、
精度の高い、幅広いアドバイスができます。

・これまで数多くアドバイスを行い、その結果のフィードバックを
すべて受けているので、アドバイスの精度が高くなっています。

・患者さんの精神状態の評価に基づいた適切な判断が下せます。

患者さん本人からお話しが聞けない場合でも、ご家族の方からの情報収集に十分な時間をかけることで、かなりの部分まで把握し適切なアドバイスをすることができると考えます。

2.伝え方
ご家族の理解度に応じて、分かりやすく説明をすることができます。

3.時間的な制限
十分な時間をかけて、完全に納得して頂けるまで説明することができます。

4.さらに
普通の相談業務は、患者さんのご家族からの質問に対してアドバイスを与える
形で終わりますが、さらには、多くの臨床経験から患者さんのご家族が気づいていない大切な問題点およびそれへの対応についてもお伝えすることが可能と思われます。

 

【⑥私の行う相談業務の大まかな流れ】

まずは、患者さんご家族・ご友人の不安、問題の解消について
可能な限り対応します。

そして、患者さんご家族・ご友人の状況を考慮しながら、
生活環境の調整など、その他必要な事についてもアドバイスしていきます。

 

これにより、以下のことが期待されます。

1.ご家族の精神的な安定
┌→ ご家族の余裕のあるサポート→良好な療養環境の提供
↑                →患者さんにも精神的な余裕が生まれ
↑                 良い影響を与える。
↑                 →ご家族の余裕が増える
↑                      ↓
└←――――――――←―――――――――――┘

 

2.生活環境の調整(家庭の役割、職場の労働環境)
┌→ 患者さんのストレス軽減  →患者さんにも精神的な余裕が生まれ
↑                良い影響を与える。
↑               →ご家族の余裕が増える→
↑                       ↓
└←―――――――――←―――――――――――┘

 

【⑦実際の相談業務で対応できること-その1】

私がこれまでに、患者さんの治療としてやってきたことを
分類すると、大体、次のようになります。

(一般的な治療)

患者さんへの診察(質問)

・問題の発見、診断、薬物療法

・問題解決へのアドバイスとフォロー。

環境改善(ご家族など周囲の対応への協力を求める)

 

この中で、相談業務で対応できることを考えてみると、
大きなところで、次の2つがあります。

1.上記②の環境改善について
ご家族など周囲の人からの情報提供をもとに、
かなりの部分をアドバイスできると思います。

これにより、良好な療養環境が作られ、ストレスの軽減に寄与する可能性が
あります。

2.上記①の問題解決へのアドバイスとフォローについて
本人の抱える問題について、ご家族が把握している場合、内容によっては
それへの対応策を、ご家族と相談することができます。

これにより、現状では、症状のために解決できない本人に代わり、
ご家族が問題の一部をサポートすることができれば、
それもよい方向へつながる可能性があります。

(当然ですが、問題解決には、患者さんの回復度合いに応じて、
患者さんが主体的に関わっていくことが最も重要です。)

 

実は、この2つは、(どこまでやるかは各主治医の判断に任されますが)
本来は一般の精神医療でも対応することです。

しかし、実際には、時間、人的パワーなどの制限からか、
全ての施設で十分になされていない感があり、
日頃から、もう少し改善する余地があると考えていました。

 

【⑧実際の相談業務で対応できること‐その2】

その他、具体的に想定される相談内容
-多くのご家族・ご友人が抱えていると思われる不安、問題点-

・様々なコミュニケーションに関するもの

ご家族と患者さんの間のコミュニケーション、
どのように声をかけたらよいか?
距離の取り方はどうしたら良いか?

ご家族と主治医の間のコミュニケーション、
どのような時に連絡すべきか?
どのように聞いたらいいか?
症状の改善がみられない時に説明を受けたい時の依頼の仕方。
転院のための紹介状のお願いの仕方。

ご家族の方ご自身とのコミュニケーションなど、
「自分のせいで、症状を悪化させてしまったのではないだろうか?」
などの自責的な発言への対処方法は?
など。

・病気に対する一般的な知識に関するもの。
ネット、書籍からの情報は多いが、今、自分に必要なものはどれか?
(病気の成り立ち、一般的な治療方法、ご家族の対応方法等々)

・精神症状の悪化のサインに関するもの
どのような所に注意するべきか?

・病院受診すべきかの判断に関するもの
どうなったら、受診を考えるべきか?
そうなった時の対応の仕方は?
本人が受診を拒否している場合の対応方法は?

・主治医へ相談すべきかの判断に関するもの
どうなったら、主治医へ連絡すべきか?

・想定される症状の変化とそれへの対応方法に関するもの
予め、想定し、対策しておくべき予防策は?

・症状が改善しない時の病院への働きかけに関するもの
病院を変えるべきと判断すべき基準は?

これまで、地方の基幹病院で勤務していた関係上、処遇困難な患者さんの対応について関わることが多く、その都度かなりの時間をかけてご家族、行政や保健所の担当者と共に、検討してきた経験があります。
それを生かし、実際の状況を考慮し、最善の対応策を検討いたします。

通常のクリニックや病院での対応と異なり、十分な時間をかけ、
どんな小さな不安にも、完全に納得していただけるまで対応いたします。

 

【⑨最後に】

もしかしたら、症状が長く続いてしまい、その状況に慣れ、
長年続いている状態を改善することに対し
あきらめの気持ちを感じてしまっていませんか?

以前ならトライしていた、新しい選択肢に対して
不信感を持ったり、臆病になったりしていませんか?

もしそうなってしまっていたとしても、
それは、長年、現在の医療制度のもとで治療を受けてきたのであれば、
ある意味、やむを得ないことかもしれません。
(もし、お時間がありましたら、「現在の精神医療に対する私の考え」
をお読みいただければ幸いです。)

でも、頑張ったことに対しては、必ず頑張った分だけ
何か報いがあると思いませんか?

これまでも、そして、これからも。

無駄なものは、何一つないと思いませんか?

自分が行動して、何か一つでも得ることができたら、
それは、素晴らしいことだと思いませんか?

何か少しでもを感じるところがあったら
連絡して下さい。

「少しでも状況を良くしたい」という
あなた自身の心の声を大切にして欲しいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です