「相手を変えることの難しさ」

日々、人間関係でストレスを抱えている方によくお伝えすることがありますので、今回は、このことについてお話します。少し長いですが、大切なことなので、じっくりと読んでいただければと思います。

人は、「相手を変える(=相手の行動を変える)ことの難しさをどうしても過小に評価してしまう」ように思います。特に、自分が普段当たり前にやっている行動を相手に取らせようと思う時は。

中には、自分があえて伝えなくても、自分の思い通りに相手が行動を変えることを当然のように期待してしまう人もいるほどです。ここで言っている“相手”というのは、日々接するすべての人のことです。

つまり、奥さん、旦那さん、子供さん、両親、友人から近所の人、職場の上司、同僚、部下、お客さん、見ず知らずの人にいたるまで、あなたの目の前に現れる人すべてです。

人間は習慣の動物です。私達の行動はどれ一つとっても長い時間をかけて作られた習慣の賜物です。習慣が行動へ与える制限の強さは様々ですが、ほぼ信念と言っていいほど強力な力を発揮するものもあります。

自分の行動を変えることの大変さを一瞬でも思い出せばすぐわかることですが、実は相手の行動を変えることは、とてつもなく大きなエネルギーを要することです。

 

★思い込みと現実のギャップ

相手を変えることの大変さに対する、思い込みと現実のギャップが人間関係において大きな問題となります。

人間関係においては何か問題が起こる時というのは、自分としては精一杯頑張っているので、どうしてもこれ以上の改善を目指すならば、当然、相手が変わるべきと考えてしまいがちです。真面目で、一所懸命な人ほど、この罠にはなりがちです。

そのため、まずは相手に対して自分が思うように変わるようにと働きかけます。しかし、やってみるとわかりますが、それに要するエネルギーは、予想以上に大きいのです。そして、それにも関わらず多くの場合は、うまくいかず、長期間に渡り多大なエネルギーの浪費となってしまいます。

これは相手が変わることの大変さを無意識に過小評価してしまうためだと思います。

実は、人間関係のストレスの原因のほとんどは、自分の思い通りにならない(変わらない)相手に対して、変えようと多大なエネルギーを日々浪費していることだとも言われており、あなたにも心当たりがあるかもしれません。

このストレスの影響は莫大なもので、時に、自律神経への作用を介し不定愁訴を始めガンにいたる様々な身体症状を引き起こします。つまり、逆に考えると、このストレスを手放すことができれば、これら身体症状でさえ改善へ向かうということです。(実際にこれまで、こうしたケースをたくさん見てきました。)

まずは、このことに気づき、これまでの対応を変えるだけで、すぐにでも楽になる人が増えるのではないかと考えています。

 

★難しさを過小評価してしまう原因

それでは、なぜ、私達は相手を変える(=相手の行動を変える)ことの難しさを過小評価してしまうのでしょうか?

一言で言うと、”無意識的に自分を基準にして考えてしまうから”です。自分の頭の中にあるものを、そっくり目の前の相手にそのまま投影してしまうのです。これはよほど意識していないと気づくことはできません。

・「行動を変えることの必要性を、相手も自分と同じだけ真剣に感じている」に違いない。「こちらが言わなくても、相手は当然気づいている」と考えるのは、もはやテレパシーレベルの話です。しかし、私達は無意識にこれをやってしまいがちです。

このような状況においては、自分なら当然取るべき対応を、相手も取るはず。取らない場合は、気づいていないだけ。だから、指摘してあげたら、それに対して感謝して行動するはず、などなど。

相手の人とは、これまでの生活習慣、物の見方が基本的に違うのですから、自分と同じ考えを持っているとしたら、それは極めて稀なことで、奇跡に近いです。

100歩譲って、相手とたまたま同じ考え方になったとしましょう。しかし、それをもとに行動できるかというと、そこにはまた高いハードルがあります。「自分なら容易にできる行動だから、相手も簡単にやってくれる」に違いないと考えるかもしれません。しかし、人間は皆様々なパターンを持ち、特異不得意なこともバラバラです。

さらには、前述したそれぞれに固有の“習慣”という大きな問題もあります。これらはあまりに当たり前過ぎて、よほど意識しないと、認識することはできません。

こうして、その他いくつものの、自分の考えや基準を相手に投影して楽天的な期待をしてしまうことが原因です。

 

★人(の行動)が変わる時とは?

基本原則①

人は、自分で変わりたいと思った時に変わる。

自分で行動したいと思った時に行動する。

逆に言うと、それ以外は、変わらないし、行動しないということです。非常にシンプルで、当たり前すぎますが、自分に当てはめるとよく分かるのではないでしょうか。

基本原則②

人は不快を避けて、快楽を求める。

つまり、行動が変わることにメリットを感じた時にはじめて行動が変わるということです。要は、行動を変えるためには、行動が変わらない理由を見つけ、それを上回るメリットを見つける必要がある、ということです。

この辺から少しずつ、相手の行動を変えることの難しさを感じ始めてきたかもしれません。

そのためには、相手の思考パターン、行動パターン、好き嫌い、得意不得意、など相手についての深い理解が必要となります。ここまで来ると、かなり難しいことが実感できるのではないでしょうか?

とても大変ですが、時と場合によっては、確かにこれが必要なこともあります。

本当に相手のためを思って行動を変えようとする場合は、これらを覚悟して取りかかる必要があります。ただ、口で行動を指示しただけでは自己満足に過ぎず、ほとんどの場合、何も変わらないので。

 

★今後、取るべき行動とは?

それに比べたら、自分の行動を変えることのメリットを見つけ、自分の行動を変えたほうが断然、楽だと思いませんか?相手のことをあれこれ考えて、エネルギーを浪費するよりは、まずはさっさと自分にフォーカスを当ててみるのです。

自分については、どんな相手と比べても、すでに、これまで長い年月をかけ、圧倒的な理解ができ上がっているのですから。

そうです。結論は、当たり前過ぎて、拍子抜けかもしれませんが、まず、自分が変わることです。

ここまでを読んで、自分が変わることのメリットを実感してもらえればと思います。

 

★最後に、「返報性の原理」という人間の心理について。

これは、「人は他人からなにかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情をもつ心理」のことです。あなたも心当たりがあるのではないでしょうか?

ですので、まずこちらが変わることで、この原理が働いて、結果的に相手が変わることもあり得ます。

この段階までくることができれば、相手が変わる可能性は結構高くなっているかもしれません。

 

他に、これに関連した記事がありますので、参考にしてみてください。

「嫌な気分になった時に」
「苦手な人に対する感情を一瞬で変える方法」
「強制的に感情を切り換える方法」

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