人はいつでも変われる

誰も信じられなくなって自殺を図った70代男性の話。

 

ある日、人生に絶望して死を覚悟し

手にした刃物で、ひと思いに左手首をかき切った。

 

心配した家族が救急車を要請し、

総合病院の救急外来へ救急搬送された。

 

看護師が、圧迫していたタオルを外した瞬間、

シュッと噴き出した血が天井に達した。

 

傷は動脈に達し、腱が断裂し、

一刻も早く緊急手術が必要な状態。

 

しかし、長年の病院での対応から

医療者に対して不信感で一杯の彼は

「おれに触るな! 家に帰る!」の一点張り。

 

救急隊員、看護師の問いかけには

閉眼したまま一切答えず、

完全な治療拒否を貫いている。

 

コールを受け、私が救急外来に着いたのは、そんな時であった。

 

医師である私は、はじめから

彼にとって信頼度マイナスの人間であった。

 

しかし、その2時間後には、彼は希望をみつけ、治療を受け、

私の外来受診を予約して、奥さんと静かに帰宅した。

 

数日後、約束通り外来を受診し、

診察後、晴れやかな顔で、

 

左手首の包帯を指さしながら、

「これをやる前に、先生に会いたかったな」といい、

診察室を後にした。

 

この時、

「人間はどんな状況でも、いつでも変われるんだ」

と実感した。

 

この事をもっと多くの人にも知ってほしい と思い

日々活動している。

 

 

精神科医 阿部正人

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