妄想のある方への接し方(第1回目)

今回から3回にわたって

「妄想のある方への接し方」について、そのご家族の方に参考になると思われることを書いてみます。

 

(今後の予定)

・第1回目 必要となる基礎知識 

・第2回目 ご家族が接する(話を聞く)時の心構え

・第3回目 実際の対応例

 

それでは、ご家族が接する時に必要になると思われる基礎的なことについていくつかお伝えします。

 

①.妄想の出現について

幾つかの環境や体調的な条件が重なりストレスが過大に加わると、それまで健康だった人でも妄想が現れることがあります。

ですので、妄想がある場合、身体的な異常(脳やホルモン)はあることもないこともありますが、少なくともストレスの大きな状態にあると考えられます。(原因はともかく、妄想自体は大きなストレスの原因になりますので)

これから説明する対応でストレスを減らすことで症状の改善(軽減あるいは消失)が期待できるケースがあります(一般に、その妄想に悩んでいる期間が短いほど改善しやすい傾向にあります)。しかし、個々の状況によってはそれだけでは改善せず、お薬が必要なこともあります(後述します)。

 

妄想の内容は絶対に修正不可能

妄想とは、それを否定するどんなに完ぺきな証拠を提示できたとしても、修正不可能なもの(妄想の定義)であり、説得は全く効果ありません。ですので、妄想が疑われた場合、説得は全く意味がないので、方針を切り替えて下さい。

しかも、相手を説得しようとすればするほど、自分は理解されていないと感じ、相手の心は離れ、大切な信頼関係も失われます。これにより孤独感・不安が大きくなりストレスは増大し妄想はより強固になります。

★認知症がない場合は、問題となっている妄想に関する事以外については、全く問題がないことが多いです。

 

妄想の出現には原因がある事が多い。

多くの場合は、妄想が出現する時点において、なんらかの原因があり、その解決が必要となります。妄想自体はあくまでも結果であり、フォーカスすべきはそこではなく 妄想が出てきた原因です。

しかし、専門家以外は、原因を扱うことは困難です。

経験のある精神科医は、

・豊富な知識と体験から余裕をもって対応することができます。→これにより、患者さんにも安心感が伝わります。(薬の投与が必要な場合でも、その分、少ない量で済ませることが可能です)

・患者さんの状況は多種多様ですが、状況に応じて必要な対策がわかり、すぐに適切な対応が取れます。

 

ご家族ができること

・まずは患者さんとの信頼関係を維持する、または回復すること。

・そのためには受容的に話を聞いて精神的な安定を与えるように試みること。(専門家の対応が必要なケースでも、信頼関係ができていれば、専門家への橋渡しがスムーズに行えます。)

また、ご家族に受容的に話を聞いてもらい“自分が理解してもらえた”という感情を得ることで、気持ちが楽になりストレスが減り、これだけで症状が軽減することもあります。

 

⑤それでも症状が続き生活に支障をきたす場合

根本原因の解決(及び、解決までの間の対症療法的な対応-お薬)を行う必要があり、精神科受診(精神療法、薬物療法)につなげる必要があります。

全てにおいて言えることですが、人は症状が続くことだけで不安が強まります(精神的なものの場合は特に)。ですので、そのままでは必ず症状は増悪します。しかし、早期に治療を受けることができれば、患者さんにとって少ない負担で快方に向かうことが多いです。

 

まとめ                                                        │

ご家族の対応の重要ポイントは、

(1)ご家族が話を受容的に聞くことで、信頼関係の維持または回復をはかる。(このことは専門家受診の有無にかかわらず大切です)。

(2)同時に、ご家族だけで対応可能なレベル(受容的に話を聞くことで患者さんの症状が徐々に改善して行くレベル)にあるのかについて評価を進める

(3)ご家族だけで対応可能なレベルにないことが明らかになった時点で、なるべく早期に、専門家への橋渡しを進める。(これまでの経過をまとめ、専門家受診の準備をする)

 

★専門家への橋渡し、精神科医の利用法については、別レポートで詳しく説明します。

専門家への橋渡し

→別レポート「精神科医療につなげるために」

精神科医の利用法

→別レポート「精神科医を効果的に利用する方法」

別レポート「精神科医を効果的に利用する方法」(続編)

 

専門家への相談の有無に関わらず、ご家族との関係は大切です。

家族の信頼関係が十分でないと、専門家へ相談したとしても、長期的に見て治療は困難になることが多いようです。

そこで、次回(第2回目)ではご家族が接する時の心構えを述べます。

 

精神科医 阿部正人

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