現在の精神科医療に対する私の考え

①現在の精神医療

現在は、ストレスがどんどん増え、
年々精神的に問題を抱える方も増えている状況です。

一方、精神科治療における、薬物療法の進歩は目を見張るものがあり、
抗うつ薬一つを取ってみても、新薬が数多く作られていることは、
皆さんもご存じのことと思います。

このような状況の元、時代にマッチした形で、
現在の医療では、薬物療法が主体となっており、
なくてはならないものになっていることは否定できない事実です。

現在、医学、特に精神医学の分野においても
こうして新しい治療法や、知見が増え、日々進歩しているように感じられます。

しかし、見逃すことのできない一番大事なことは、

「それにもかかわらず、
精神的な悩みを抱えている患者さんの数が増え続けていること、
そして、症状の改善しない患者さんが一定数いるということ」

です。

(うつ病と診断される患者さんの数は年々増加傾向にありますし、
私のこれまでの臨床経験からも、薬物療法主体では改善しない患者さんが、
一定の割合でいることを実感しています。)

②私が考える、本来あるべき精神医療の姿とそれに対する現状

【私が考える、本来あるべき精神医療の姿】

精神療法的な関わりにより、
病気の本質、原因に向き合い、乗り越えていくという姿勢が
とても重要であることを実感しています。

そして、薬物療法と精神療法のバランスがとても重要だと思います。

私としては、精神療法的な関わりをメインにし、それを補う形で
薬物療法を用いるのが良いと考えています。

但し、実際の臨床の現場では、その施設の状況にもよりますが、
診療にかけられる時間などの制限もあり、
若干、薬物療法寄りにシフトするのはやむを得ないことかもしれません。

本来の精神医療は、
それぞれの患者さんの症状の根本的な原因を探り、そこから
その人にあった個別の対応を見つけるものであると考えます。

自分の中では、

   「症状によっては、必要に応じてお薬を使いながら、
患者さんの健康な部分に働きかけ、少しずつ、そこを拡大していく。

それによって、その人の抱える問題を解決できるように導く」

というイメージを持っています。

具体的には、治療の経過では、必要に応じてお薬を使いながら、
患者さんの状態を安定させるとともに、内面的な問題の解決、
環境的な問題の解決をはかっていくものだと思っています。
(そして、その時々の解決レベルに応じて、お薬の量が決定すると
考えられます。)

その結果、
問題解決の状況に応じて、お薬の使用量を速やかに減らし、
できれば、薬が不要となり、外来通院が終了するのが理想です。

【それに対する現状】

しかし、実際には、一番大切と考える、問題の解決が
治療の中心に設定されることは多くはありません。

実際に、問題の解決策を見つけようとしても、現在の医療制度では、
技術的、時間的な制限から、見つけられる事は多くはありません。

さらには、それが見つかったとしても、
同様の理由から、実際に、それが提供される事は多くはありません。

このような状況の中、実際には、
まずは、対症療法的に、症状をとることを優先し、
お薬による症状の安定化がどうしても主眼となりがちです。

そして、その結果、症状が安定してきた時においても、
そのまま、薬物療法が主体のままで、
本来必要と考える、問題解決への対応に手が回らないケースが
多い印象があります。

このような状況においては、

話を共感的に聞いてもらっている中で、気持ちが整理され症状が安定し、
自分の力で問題を解決できるようになった場合や、

経過中に問題自体が小さくなったり、消滅した場合には、

その後、良好な経過をたどることが多いです。

しかし、それ以外の場合には、
どうしてもお薬に頼る期間が長くなってしまったり、
なにより、内面の問題解決が一番必要となる患者さんにとっては、
症状の改善がみられず、辛い状況が続いているように思います。

③薬物療法主体ではよくならない患者さん

人間の心は、とても繊細で、複雑なものです。

他人には言えないような悩み、問題を持っていることがあります。
(多くの場合、精神科を受診しても、話せていないと思います。)

また、本人は忘れてしまっている幼少時期の辛い経験を持っていることが
あります。
(精神科を受診しても、経験のある精神科医が引き出さないと、
永遠にわからないままです。)

薬物療法主体で良くならない患者さんの多くは、
それらが未解決のままであることが、根底にあるように思います。

問題が未解決の状態が続くだけでも、十分に回復しにくい状況と言えます。

しかし、それ以上に問題なのは、

「専門病院で治療をしているにもかかわらず、その状態が続いている状況」
が、無意識のうちに「自分は難病である。このまま治らないのでは?」
と思い込ませてしまっていること

だと思います。

また、そのことは、本人のみならず周囲のご家族にも
同様の思い込みを与えてしまいます。

このような状況では、希望を持つことは困難になってしまいます。

そして、なによりも、
この状況を長引かせることは、この思い込みに力を与えることになり
より治りにくくしてしまいます。

最悪の場合、問題が解決したにもかかわらず、
この思い込みの影響で、症状が続いてしまうこともあります。

ですので、なるべく早期に改善させ、
この思い込みを断ち切り、自信を回復させる必要があります。

これまでの治療で症状が改善していないのであれば、
多くの場合、これまで扱ってこなかった問題が
何かしらあると思われます。

また、既にある問題が解決されなければ、
一時的に症状が改善しても、何かをきっかけに、
症状が再燃する可能性も高いと思われます。

少し考えればわかることですが、
薬物療法自体には、個人の問題を解決する力はありません。

また、薬物療法主体の治療で改善しないからと言って、
難治性とは限りません。

治療の方向が合っていないだけ かもしれないのです。

今、症状が変わらず悩んでいるのでしたら、
そこに目を向けるタイミングにあるのかもしれません。

現状で満足できる結果を得ていない患者さんには、
是非、この点を考えてほしいと思います。

この世の中に、魔法はありません。
原因と結果があるだけです。

きちんと原因に向き合えば、結果が変わると思います。

④診察、治療、真に治ることについての私の考え

・診察とは:
以下の集合体であると考えています。
①患者さんおよび関係する方との信頼関係の確立
②医師による問診と、
患者さんおよび関係する方からの十分な情報提供
③患者さんの徹底的な現状把握
④患者さんの症状に影響する原因の徹底的な把握
⑤患者さんから得た情報をもとに
医学的な見地から、現在起きていることの原因と結果の
一番可能性の高いストーリーを再構築し、
患者さん、関連する方へ、最も理解しやすい形で提供する。
⑥診断(見立て)の提供
⑦大まかな治療方針(患者さん本人、関係する方への対応方法)
の提供

・治療とは:
①可能な限り、患者さんおよび関連する方との共通の認識を持ち、
診察の結果得られた、診断、治療方針をもとに、
患者さんにとって無理のない最善の治療計画を立てる。
②計画に従って、必要な情報提供、環境調整の依頼などを行う。
③患者さんおよび関連する方に行動していただく。
④その結果(結果に対するフィードバック)を受け、
その都度、患者さんを診察し、状況を把握し、それに応じて
必要なアドバイス、軌道修正などの対応をし、改善に向かうこと。

・真に治るとは:
辛い経験を乗り越え、自分の学びに変えること。
それにより、日々の生き方が変わり、同じような経験を
避けることができるようになる、

または、
そのような状況になりそうになった時でも、
事前に、必要な行動が取れるようになること、と考えています。

そして、その辛い経験からしか学ぶことができない、大切なことを
学び、自信をもって、その後の人生に生かせるようになることを
期待します。

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