これまで数多くの認知症の患者さん、ご家族をみてきて、重要だと思うことを書いてみます。
一般的な認知症のイメージは、物忘れがあっても、全く困惑感がなく、ニコニコし、作話をしてその場で適当に話を合わせるといった感じでしょうか。
ただし、これは、かなり症状としては進行している状態です。
自分で物忘れを心配している人は、客観的に以前の状態と比較できていることから、ほとんど認知症でないか、例え認知症であったとしても、初期の段階であることが多いです。
しかし、その状態でストレスの強い状態を続けると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、脳神経細胞脱落につながり、認知症の症状を進めてしまうので、ストレス、特に不安の解消が必要だと考えています。
(1)もし、本人の言動から認知症の入り口に入っているかも?と思ったら、「VIP対応して下さい!」
高齢者のど忘れ、ミスをみてもあまり、厳しく注意しないことをお勧めします。
出来ないものは出来ないと理解し、本人のストレスを減らすことを第一に考えて下さい。
そのような状態から、子供の躾のように新しいことを覚えさせることはほぼ無理です。
これを進めるとストレスが増大し、ストレスホルモンであるコルチゾールが増え、神経細胞を壊し、認知症化をより促進してしまうだけです(このような対応で、ストレスを減らすことで、結果的に認知機能が高まることはあり得ると思います)。
危険な状況をできるだけ排除し、もし、間違ったことをしても安全な状態を確保しましょう。
出来ないことを出来るだけ早く把握し、先回りした対応を考えましょう。
(2)プライドを守る
あと、大切なのが、プライドを傷つけない、立場を守ってあげること。
ミスを指摘、厳しく注意しても、その内容は一瞬で忘れますので意味がありません。
しかも、意味がないだけではありません。感情が動いたこと、辛く当たられたことは結構な確率で、認知症の人の記憶に残ります。内容というより、嫌な感情として残ります。(個人的には、将来、被害妄想が出た場合、その原因になるのでは?と思っています)
プライドを傷つけることは絶対に避けましょう。
→と言うことは、いい気持ちになったことも覚えているということです。感情が動くから。
昔の輝いていた時の記憶を思い出させてあげたり、プライドを大切にしていい気持ちにすることは認知症の進行抑制に役立つだけでなく、その嬉しい場所にいたあなた=goodという記憶をしっかり作り、あなたを見方と判定します。
これは、その後の対応にとって非常に重要なことです。
(3)日々、本人の言葉ではなく、行動や表情に意識を向ける。
これにより本人の感情や認知症の進行が明らかになります(言葉はあまり参考になりません)。
最後に、これに関して、脳の活性化に役立つことをお伝えします。
本人の脳の活性化のために、楽しいことをやってもらう時間を多く持ってもらうことは大切なことです。その時、できるだけ、本人の言葉ではなく、表情に意識を向けることが大切です。これをもとに、困惑、疲労感がみられたら臨機応変に、別の行動に変更を。
辛い状態をそのまま続けさせない。嫌なことは無理に勧めない。という気持ちで対応されると良いでしょう。
①会話
本人にとって、若い頃の楽しかった思い出は1つや2つ必ずあるはずです。
本人の表情を見ながら、質問しその話題を見つける。
困惑していたら話題を変えましょう。楽しそうな表情になるまで。
②昔の写真アルバムをみてもらう。
本人が喜ぶ写真を見つけるまで、一緒に探す。
③本人の好きだったこと、趣味をやってもらう。
いろいろと提案して、楽しめるものを一緒に探す。
実際には、様々な状況があり、完璧に行うことは難しいかもしれません。
ただし、原則さえしっかり抑えておけば、その場その場で、最善の対応がとれるのではないかと思います。