「自分の子育ては、これでいいのだろうか?」
「自分の子育ては、正しかったのだろうか?」
これまでたくさんの親御さんからこういった質問を受けてきました。
これに対してお伝えしてきたことをまとめてみました。
◆そもそも、親が子供のために将来を先取りして準備することはできません。
親が、将来必要になるものを先取りして、子供に教えてあげることはできません。
たとえ教えてあげることができても、それだけでは、身につけさせることは難しいです。
①親子の性格、考え方の違い
親が必要だと思っていることは、親のそれまでの経験、周囲の情報をもとに、自分にとって必要だと思ったことです。
子供の考え方、性格、才能は、親と違うため、子供が必要とするものは、全く別のものだったりします。
②育ってきた環境(時代)の違いと予想できない変化のスピード
親と子では、少なくても、20年~25年の差がはじめからついています。
それでも、世の中の変化が緩やかで、ほとんど変化がなければ、親の考えで進めても問題ないかもしれません。
しかし、実際には全く違い、現代の変化のスピードは、とてつもなく速いです。
アメリカのデータによれば、新しい技術が全人口の40%の人に浸透するまでの時間は、電話が64年かかっているのに対し、スマートフォンは、なんと、約10年だそうです!
そして、スマートフォンより新しいタブレットにいたっては、さらに短い期間になりそうだとのことです。
さらに、今後3年間で、これまでの20年間に相当する変化が起きると予想している学者もいます。
子供が成人して独り立ちする時に、どんな世界が待っているか 誰にもわかりません。
③大切なことを身につけるためには、痛みが必要
あなたにも経験があると思いますが、
人が一番、身につくのは、何かで困って痛みを感じている時です。
必死に学びますので。
子供にとって、今後、何かで困ることがあるかもしれません。
その時こそ、貴重な学びの時です。
ここで、手を出したくなるかもしれませんが、それをすると、せっかくの学びの機会を奪ってしまいます。そこでの我慢こそが、子供の学びには必要です。
さなぎから蝶になる所を見ていた人の話
さなぎから蝶になる瞬間をみたくて、じっと見ている人がいました。
一時間位見ていましたが、いつまでたっても、硬い殻の中で もがいているだけで出てきません。
苦しそうに思ったその人は、ハサミで、殻を切って出してあげました。
その結果、どうなったと思いますか??
羽が十分に発達せず、飛ぶことができず、そのまま、さなぎでもない、蝶でもない状態で、トボトボと 歩いて行ってしまった ということです。
硬い殻の中でもがき、養分を羽に送る作業が必要であったのに、それが途中でストップしてしまい、羽が十分に育たなかったのでした。
この話は、必要なことを 身につけるためには、痛みが伴うこと、そしてそれを見守ってあげる事の大切さを教えていると思います。
必要なことは必要な時に学べば良いと思います。
必要かどうかわからないことを前もって苦労して学ぶ必要はないと思います。
◆親が出来ること
①“愛情”を与え、見守ること
必要な学びの時が来るまで、必要なもの“愛情”を十二分に与えて、見守ってあげましょう。
そうすれば、強い気持ちをもって、その時々で、必要なものを身につけられます。
愛情さえあれば、どんな困難にぶつかっても、自分にとって必要なことを学んでいくのだと思います。
②「信じているよ」というメッセージを送り続けること
日ごろから、「信じているよ」というメッセージを伝えてあげて下さい。
人間にはとても素晴らしい能力があります。
いつからでも 変わることができます。
いつからでも遅すぎることはないと思います。
とにかく、信じて下さい。
そうすれば、きっとそれに答えてくれるでしょう。
そして、疲れて頼ってくることがあったら、
愛のある言葉をかけて、相談に乗ってあげたらいいと思います。
また、元気になって立ち向かっていくでしょう。
精神科医 阿部正人