精神科医療につなげるために

一般的に、精神科の受診は本人にとっても、ご家族にとってもとてもハードルが高いものです。今回は患者さんご家族が患者さんを精神科医療につなげるために必要と思われることをまとめてみました。

 

具体的には、

1.精神科受診を考えるタイミングについて

2.患者さんに受診を勧める方法

3.受診に抵抗している患者さんを受診させる方法について

です。

 

1.精神科受診を考えるタイミングについて

一般には、精神科受診は、敷居が高いため、受診のタイミングが遅れることが多いです。

一方で、精神科を受診しなくても症状が改善することもありますから、精神症状が出たからといって、即、精神科受診を勧めることは現実的ではない事も事実です。

しかし、次の2つの条件がそろった時は、早めに精神科に相談されることをお勧めします。

① 本人または家族が、精神症状の進行を実感している。

(不眠、イライラ感、意欲の低下その他、普段と異なる精神状態)

② 原因不明または原因がわかっていても改善の見通しが立たない。

特に②の条件を満たす場合は、症状自体が軽度であっても、重症化するのは時間の問題であることが多いです。

症状が重症化するまで待つべきではありません。早めに、専門医を受診し手当をすることをお勧めします。早期に受診すれば、原因への対応がすぐにできるため、治療自体簡単に済むことも多いです。逆に、辛い状態が長期間続くと、不安の増大、自信喪失につながり回復しにくくなります。

 

精神科医の先生に、話を聞いてもらい、原因を一緒に探るくらいの気持ちで早期に受診することをお勧めします。

 

2.患者さんに受診を勧める方法

精神科受診は、以前に比べて敷居が低くなってはいますが、一般的に考えても、心理的な抵抗が大きいです。ですので、精神科受診を勧める時は、慎重な対応が必要なことが多いです。

これまでご家族にお伝えして効果のあった方法について説明します。

下記のように、患者さんへの負担の少ない順に対応し、患者さんの受診を促します。

 

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①精神的な面には触れず、不眠や体調不良について気になっている旨を伝える。同時に、「困ったことがあれば、いつでも相談してほしい」と伝える。

②(症状が変わらないのに、医療機関を受診しないようであれば)まずは精神的なことには触れず、不眠や体調不良の改善のために、かかりつけ医を受診してみてはと勧めます。(そして、かかりつけ医の診察を受けてもらい、その結果を家族で話し合い、次のステップを相談します。症状によっては、かかりつけ医から精神科受診を勧められることもあります)

③不眠、不安がある場合で、本人が薬の治療を望んでいる場合は、かかりつけ医でもいいですが、はじめから専門医を勧めることも可能です。(専門医の方が、より症状にあった薬の処方ができるとして勧めて下さい)

④不眠、不安がある場合で、本人が薬の治療を望んでいない場合は、専門の先生にお話を聞いてもらうだけでも楽になるかもしれないと伝えてみる。

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☆以上の他に、精神科、保健所、精神保健センターに具体的な状況を伝えて相談することで、より効果的な方法をアドバイスしてもらうことも可能です。

より詳しいことが知りたい場合は、是非、相談してみて下さい。

 

3.受診に抵抗している患者さんを受診させる方法

上記2.での対応をしたにもかかわらず、本人が受診を拒否していて家族内での対応が困難になっている場合は、是非、病院、保健所、精神保健福祉センターに相談して下さい。

相談項目は次の3点です(病院に相談することについては、後述します)。

【相談項目】

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現状で最善の方法について

症状によっては、家族のコミュニケーションを改善させ、関係をよくしてから精神科受診につなげた方が良い場合もあります。状況を冷静に判断して、必要な行動を検討しアドバイスをもらうことは有用です。

 

②受け入れ病院の選定について

★自宅で様子を見ることが困難な場合、入院が必要になります。この場合、事前に病院に連絡し空床の有無を確認しておかないと、せっかく受診しても断られ、たらい回しになることがあります。

夜間休日の場合は、地域によっては、精神科救急システムを整備し担当病院が入院できるベッドを準備しています。これについても保健所、精神保健福祉センターで情報を得ることができます。

入院の判断、調整が必要になりますので、まずは、保健所、精神保健福祉センターに相談してください。

 

③患者さんを病院へ連れていく手段について

受け入れ病院が決まっても、患者さん本人が強く抵抗する場合、物理的に困難な場合があります。その場合の、協力者の手配、連れていく手段についても保健所、精神保健福祉センターで相談にのってもらうことができます。

救急車、民間救急などがありますが、地域によっていろいろルールがあるようです。

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【ご家族が病院を直接受診して相談することについて】

病院に直接、家族が受診し、医師からアドバイスを得ることは基本的には可能です。しかし、本人の症状によっては、受診に同意していない本人のカルテを作ることが難しく、受け入れてもらえないこともあり得ますので、事前に病院に電話で確認しておくと確実でしょう。

一方、“本人が受診を拒否していること自体が、本人に正常な判断能力がないことを示している”と考えられ、医療保護入院という本人の意思に関わらない強制入院の適応となるケースもあります。この辺については医師の判断が必要です。是非、相談してみて下さい。

 

【最後に】

ご家族としては、本人の同意なしに、精神科に受診または入院させることに対して、どうしても大きな抵抗感を感じてしまうこともあるかもしれません。

ただ、精神科の場合、患者さんご本人ではどうしたら良いか自分でもわからなくなり、混乱し苦しんでいることもあります。

そのような場合は、是非、ご家族が勇気を持って、ご本人に変わり適切な判断してあげてください。

これまで、ご家族の判断で、早期に治療に結びつけることで後に症状が改善してから、ご家族が感謝されるケースをたくさん見てきました。

 

精神科医 阿部正人

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