不定愁訴を訴える高齢者の方への対応(第3回目)-実際の対応について

日々の臨床の中で、「不定愁訴を訴えている高齢のご家族(両親、姑、舅)」への対応方法について質問を受けることが多くあります。

3回にわたり、そうした質問を受けた際に、お伝えしていることを書いています。

 

今回は、「不定愁訴を訴える高齢者の方への対応」(3回シリーズ)の3回目(最終回)です。

第1回目 不定愁訴について 

第2回目 高齢者の心理状態

・第3回目 実際の対応について

 

なお、この内容は、(特に訴えのない)高齢者の方に接する時にも役立つと思います。是非、参考にしてよりよい関係を築くための一助としてください。

 

それでは、「不定愁訴を訴えている高齢者への対応」について説明します。

 

1.全体の流れ(イメージ)

不定愁訴を訴えている状態では、エネルギーが枯渇し本来の対応ができません。

→高齢者の方が感じている恐怖・不安によるストレスを和らげることで、高齢者の方自身が正常な判断ができるようにります。

→高齢者の方の現状への理解が深まり、周りの状況が見えてきます。

→それにより、本来の理性的な対応ができるようになります。

 

現状では、非常に視野が狭く、本質的な所が見えていません。

エネルギーも枯渇しています。

ですので、「まずは与えて、それから与えられる。」というイメージで対応します。

 

2.不定愁訴を訴えている高齢者の方への対応について

 (1)マインドセット

①信頼関係を失うのは一瞬ですが、作るのも一瞬です。心が通じた瞬間に信頼関係は出来上がります必ずしも、時間は必要ありません。人は、変わることができます。

 

②ただ、この対応はエネルギーがかなり必要なことでありますので、体調がすぐれない時には、無理せず距離を取ることをお勧めします。

→エネルギーが溜まった時に、次のステップへ移って下さい。

 

③エネルギーがない時に、形だけ、何時間否定せずに聞いても、患者さんは相手の内心を一瞬で察知してしまいますので、お互いに疲れるだけで、効果はありませんから、やらない方がマシなくらいです。やると決めたら、徹底的にやることです

 

人は基本的には、皆同じです。

同じような条件が揃えば、同じような反応を示すものです。眼の前の相手はたまたまそうなる条件が揃っただけで、自分たちも同じようになる可能性はあるわけです。こう考えると、少しは共感しやすくなるかもしれません。

 

皆どんな人も、(犯罪者も、聖職者も)自分の現実だけが唯一正しいと信じているのです。少しも疑うことはありません。ですので、ここを否定することはできるだけ避けなければなりません。相手は、少ないエネルギーを使って必死に抵抗してくるのは明らかだからです。しかもそれだけ済むことは決してなく、確実に症状の悪化を伴います。

 

(2)まずは徹底的に、相手を理解しようと努力すること。

そのために、基本は、相手の言うことは一切遮らず、否定せず、全て聞き、その辛さを共有することです。そのために、徹底的に知りたいからもっと教えてほしいというところまで行ければ最高です。(その際、自分が、相手と同じ年齢で、同じ状況になったと想像して対面してみてはどうでしょうか)

 

(3)相手の表情を見て、フィードバックする。

そして、必ず、話している時の相手の表情をよくみて下さい

成功かどうかは、そこに全てが表れます。表情が和らいでいれば成功です。そして、必要に応じてフィードバック、軌道修正を繰り返して下さい。これさえ確実に行い、その都度修正すれば、大きく道を外すことはありません。

 

多少遠回りしても、必ずや理想の結果へ近づきます。逆にこれをしないと、気づいた時には、相手の心はすっかり離れてしまっているという結果になりがちです。

 

(4)一生懸命に、メッセージを伝える。

所詮、他人のことは完全には理解できません。大事なのは理解しようと一生懸命に努力することです。その姿勢によって、何かが相手に伝わるのだと思います。また、これは想像力の問題でもあります。→そのため、大きなエネルギーが必要となるのです。

結果として、「自分はお母さん(お義母さん)の味方だよ。困った時は、一緒に考えましょう。」というメッセージが伝わることを目標にしてもらえればと思います。

 

(但し、これは、必ずしも相手の要求を全面に受け入れるということではありません。

判断に迷うことがあれば、「それはよくわからないから、今度、先生に聞いてみましょう」などと、主治医(あるいは、これから受診する予定の先生)に問題解決を託しても構わないと思います。)

 

3.なにも対応をせず様子を見ていると

時間の経過と共に、高齢者の方は徐々に体力も落ちていきますし、残された時間も減ります。そして、家族へは頼れないという孤独感に伴う不安は確実に増大します(しかも、その増大のペースは幾何級数的に増えます)。

 

ですので、これまでの状況を続けて様子を見るというのはかなり危険な選択枝だと思います。不安の増大とともに、認知機能の低下(認知症への移行)、これまでにみられなかった精神症状(不穏状態、幻覚や妄想、希死念慮、その他問題行動)へつながることもあります。

 

4.最後に-できればご家族全員参加で

これまで、多くの患者さんのご家族を見てきて実感するのですが、患者さんは当然ですが、ご家族はそれと同等か場合によっては、それ以上に辛い思いをされています。

 

皆さん、それぞれギリギリの状況下で対応されているとは思いますが、是非、ご家族全員参加で対応することをご検討頂ければと思います。今後の対応次第ではご家族みなさんにとって、すばらしい改善のきっかけになりうると思いますので。

 

しかし、ご家族が疲弊してしまっては元も子もありません。

ご家族の誰かにその役割が集中することはできれば避け、ご家族全員がうまく分担しながら対応することをお勧めします。

 

そして、少しでも難しいと感じることがあれば専門医に相談して下さい。

 

精神科医 阿部正人

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