私が考える基本戦略(全体像)
★相手が新しい行動ができない、状況が変わらない理由(4つの壁)
★信頼関係を築くことで得られるメリット(まとめ)
★信頼関係がより強固になることにより得られるボーナス
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★相手が新しい行動ができない、状況が変わらない理由(4つの壁)
①そもそも適切な対応(本人の行動を促す戦略)が見つからない
②(適切な対応が、見つかったとしても)本人に伝わらない
③(伝わったとしても)エネルギー不足のために感情が動かない
④(感情が動いて行動する気になっても、)いざ、行動しようとした瞬間の不安を消せない。
それでは、個別に解決策を考えてみます。
①適切なアドバイス(本人の行動を促す戦略)が見つからない
→適切なアドバイスを見つけるためには。
行動の戦略としては、もうこれ以上できるだけ失敗させず、小さな成功体験を積み上げさせ、自信を持たせることです。できるだけ、既に落ち込んだ自尊心をなるべく下げないことです。
人はみな、現状、能力全てにおいて違います。
そのため、本人の状況、これまで本人がやってきた経験を詳細に聞き、それを元に計画をたてる必要があります。つまり、本人にとってピッタリの適切なアドバイスを見つけるためには、本人の状況を本人と同じレベル、あるいは本人以上に深く知ることが必要です。
そのためには相手との信頼関係を作ることが第一優先となります。
信頼関係ができていない状況では、相手は、どうせ自分の事は否定されると思い込んでいるので、絶対に貴重な情報を出してくれないからです。そのような状態では、そもそも話すことも出来ないし、話すことが出来たとしても、リラックスできていないので、自分の頭がうまく働かず、思い出せないし、判断できないということもあります。
信頼関係を築くことで、相手の状況を深く理解することができれば、それを元に、より失敗確率の低い次のステップを提示することができます。
②(適切なアドバイスが、見つかったとしても)本人に伝わらない
→本人に伝わる状況を作るためには。
もし、適切なアドバイスが見つかったとしても、本人と信頼関係が出来ていないと、それが本当に素晴らしいアドバイスだとしても、相手には届きません。相手がこれまでも長い関係から、話を受け入れる態勢になっていないためです。多くの場合は、相手は、自分の正当性を伝えることで精一杯の状態です。
ここで、信頼関係を築くことで、アドバイスに耳を傾け、話を聞いてもらう事ができるようになります。
③(アドバイスが伝わったとしても)エネルギー不足のために感情が動かない
→エネルギーを蓄えるためには
さらには、仮に、本人が変われる一番の方法があって、本人にそれを伝えることが出来たとしても、これだけでは、感情が動かないので、何も変わりません。
通常、感情が働くにはエネルギーが必要です。
(エネルギーが枯渇した状態の典型は、重症のうつ病ですが、多くは感情が消え、表情が乏しくなっていることをご存知かもしれません。)
これは、信頼関係を築くことで達成できます。
なぜなら、信頼関係を築くことによって、周囲に対する自己防衛の必要がなくなるため、それ以前に使っていた無駄なエネルギーの漏れをふせぐことができるからです。
家にいる時の居心地、安心感が絶対的に変わります。
④(感情が動いて行動する気になっても、)いざ、行動しようとした瞬間の不安を消せない。
→失敗しても大丈夫と思える環境を作るためには。
エネルギーがある程度蓄積されて、感情が動くようになったとしても、それだけでは不十分です。
もし、相手の心に届いて、行動しようと気持ちが動いても、いざ、それを実行しようとなった時に現れる不安を克服する必要があります。これまで、失敗を繰り返し、誰よりも不安に対して臆病になっているのですから。
これまでにやったことのない新しい行動をするには、決断力、勇気が必要です。
そのためには、失敗しても大丈夫、一緒に頑張ろうという、心から信頼できる関係を作り、その中に身を置く必要があります。
これにより、失敗しても、何も変わらないし、それを元にやり直せばいい、応援してくれる人もいるしと思える環境ができます。
→こうして①~④の壁を乗り越えて行動に移すことができれば、それに対し、褒めて自信をつけさせることができます。こうして、小さなハードルを着実に登りさえすれば、確実に状況は改善します。
以上、個別に解決策を見てきましたが、実は、全て、家庭内の信頼関係を築くことでクリア出来ることがわかると思います。
★信頼関係を築くことで得られるメリット(まとめ)
①相手の状況を深く理解できるようになります→相手に最適の解決策を見つけることができるようになります。
②良好なコミュニケーションが可能になります。→こちらのアドバイスを伝えることが出来るようになります。
③家の中でのストレスが減りエネルギーが増えます。(自分を正当化する必要がなくなり、その分エネルギーが溜まってきます。)
→・そのため、記憶力、判断力が高まり、これまでやってきたことを正確に思い出せるようになります。
・自分ができそうかどうかの判断も正確になります。
・感情も動きやすくなります(意欲、やってみようという気持ちも出てきます)。
④失敗しても大丈夫と心から思えるようになり、失敗に対する不安が減ります。
★信頼関係がより強固になることにより得られるボーナス
ひとは、自分のためにはできなくても、大事な人のためなら頑張れるという特性があります。
→お子さんが、ご家族のためになんとか頑張ってみたいと思えるような関係を築くことができれば改善はより一層加速されます。この信頼関係さえ構築できればだいぶ状況は変わるはずです。
人は、決して、自分から動こうとしていない人を動かすことは出来ません。
次回、第3回 はじめの第一歩 に続きます。
精神科医
阿部正人