今日は、多くの人から要望の多かった「ある方法」について書いてみます。
それは、「嫌な記憶を消す方法」についてです。
魔法のように一瞬で消すことはできませんが、これからお伝えする方法を続ければ、比較的短期間で効果があらわれると思います。
まずは、具体的な方法から。
嫌な記憶を思い出した時、必ずそれと同時に、「あること」をセットで行うことで、思い出す時の辛さが減り、しかも、思い出す毎に、嫌な記憶は徐々に薄らいでいきます。
その「あること」とは、嫌な体験の結果、現在に起きているマイナスの結果(想像ではなく、実際に起きている出来事)を具体的に数え上げることです。
その時に重要なのは、生死に関わるレベルのものを数え上げることです。少なくとも、その嫌な体験をした時に感じたのと同等以上のものをです。
このように考えると、多くの場合は、嫌な記憶を思い出している時点で、当時から時間が立っていて、一段落ついており、安心安全の環境にいることが多いので、マイナスの結果はゼロのはずです。その場合は、「今は、安心安全だ」と、強く意識することです。
それでも、マイナスの結果としてカウントされるものがあるようでしたら、それについては、「その経験があったおかげで学んだこと、得られたものは何か」と考えて、それを強く意識することです。
★補足説明
多くの場合、嫌な記憶がいつまでも残ってしまうのは次のような原因が考えられます。
①忘れようと意識することで、逆に思い出してしまい、結果的に思い出す回数が増えるので、記憶に強く残ってしまいます(脳は否定の命令に従えません)。
②しかも思い出す時に、無意識のうちに、今回示した方法と「真逆なこと」をセットで行っているためです。
つまり、嫌な記憶とセットで、それによる現在の不安、または将来起こりうる不安にフォーカスしてしまっているのです(実は、人間は、特に意識しなければ、最低最悪な状況をイメージし、モノの悪い面にフォーカスしてしまう特性があります。これは、本能的なものであり、逆らえません)。
この不安は想像上のもののため、無限にイメージできるものであり、過去の一つの嫌な記憶を思い出すたびに、こんなものをセットでイメージしているのです。そのため、思い出すたびに、毎回、感情を司る視床が反応し、SOS信号を発し、感情は動き、不安な感情と共に記憶は強化されてしまうからです。
今回説明した方法では、思い出す毎に、現実の安心安全に意識を向けるために、「思い出した体験=実は安心安全なもの」との認識が積み重なります。これにより、視床の出すSOS信号は徐々に弱まり、感情も動かなくなり、結果として記憶も薄れていくということです(いわゆる「慣れ」が生じる過程です)。
一般に、記憶が強化される要素として、「繰り返し」と、「感情が動くこと」が重要ですが、特に「感情が動くこと」が大切です。繰り返しは大切ですが、感情が動かないと長期記憶にはならないので。
学生時代、試験勉強で繰り返し覚えたものが、今どのくらい記憶に残っているかを考えればわかると思います―しかし、感動しながら覚えたことは、恐らく死ぬまで忘れません。
★他に、これに関連した記事がありますので、参考にしてみてください。
精神科医
阿部正人